動画鑑賞 PERFECT BLUE

今回紹介する動画は「千年女優」「パプリカ」で有名な今敏監督の1997年監督作品「PERFECT BLUE」です。

 

当時では珍しいサイコホラーというジャンルに本気で手を出した最初のアニメ映画になります。

 

1996年に日本ではカプコンの「バイオハザード」というアクションホラーゲームがPSで記録的にヒットしていました。日本の若い層の中で「ホラー」という怖いもの見たさ的なジャンルが受け入れられる下地はこの頃に出来ていたのかも知れません。

 

とは言えそれらの影響は微々たるもので元々「PERFECT BLUE」はカナダのファンタジア国際映画祭で最優秀国際映画賞を得るほどの高い評価を受けています。

 

面白いのが全くの無名監督だった今敏を「AKIRA」で知名度の高い大友克洋の弟子として紹介されてしまったのだとかw(もちろん大友本人はこの作品には全く関係ない・・)

 

この映画祭で好評を得た「PERFECT BLUE」は50以上の国の映画祭から招待され、世界21ヶ国で販売ライセンスを獲得する大きな成功を収めました。特にヨーロッパではハリウッドの人気作品と肩を並べるほどのロングラン上映が行われました。

 

日本での上映は時系列的にこれらの後、という事になりますね。

 

驚くべきはこの「PERFECT BLUE」という作品、元は劇場用作品として作られていないのです。

 

俗にいうOVAとして販売されそこそこの評価を受けて終わるのが本来の「PERFECT BLUE」の姿でしょう。

 

それを完成直前に劇場用映画に格上げされたのだという・・

 

まぁ制作スタッフにしてみれば完成直前に劇場作品としてクオリティの底上げをしないといけないんだからたまったもんじゃありません。

 

ですが製作スタッフはやり遂げました!

 

突出した脚本はもちろん、ラストで犯人が姿を現した時の衝撃ときたら・・

 

(この辺りはブルース・ウィリス主演のハリウッド映画「シックスセンス」に似ている気がします)2回目以降の鑑賞でようやく途中途中に散りばめられた伏線やヒントを理解して回収出来るようになります。

 

そうなんですよ。普通に考えたら犯人は最初からこの人しかいないんですよw

 

とまぁ見た人しか分からない満足気な感想は一旦横に置きつつ、この作品での細かい見所や感心した点をいくつか紹介しましょう。

 

まず演出ですが背景の一部、部屋や事務所の中にある小物・・もういたるところで「血」を連想させる湿った赤色が使われているのに気が付きましたか?

 

無意識下で「恐怖」や「暴力」といった感情を植え付けられながら見ていたんですね。(正直、かなりの効果があったと思います)

 

次にB級アイドルとしての活動が思ったよりも違和感無く受け入れられたというか、すんなり入っていけた。(ふーん、そういうものなんだぁって普通に納得できるリアリティがあります)

 

作中のアイドルがステージで踊っているシーンなんかもプロの振付師に踊ってもらい、その映像を元に作られているので違和感がないのは当然、しかも使われている楽曲も実際にアイドルが歌っていそうな良曲ばかりですw何度も見ていると暗記する勢いで覚えてしまいましたw(今では仕事中に口遊む始末ですw)

 

監督からはメインの声優さんに声優特有の息遣いはなるべく控えるようにと指示があったそうです。今敏監督以外にも劇中のリアリティを重視する傾向にある人はこういう所を気にするみたいですね。

 

今回視聴したBlu-ray版の「PERFECT BLUE」ですが画質の評判はあまりよろしくありません。が、実際に視聴してみると全く問題ないので安心して欲しいと思います。

 

画面がブレブレになっているのは最初のヒーロー戦隊のシーンなのですが、そこはDVDも同じで、おそらくわざと古臭くてちゃっちいイベントに見せるための演出です。

 

それとパーケージイラストがあまり好みではないんですね。

 

パッケージを開けてディスクも取り出したら見える裏イラストの方を表紙に使って欲しかった・・

 

折角、江口寿史にキャラクター原案を頼んでいるんだから彼が描いたイラストを表紙に持ってくるべき!

 

こちらが以前から私が所有していた「DVD」のパッケージになります。もちろん表紙イラストは江口寿史による描き下ろしです。(ね?かっこいいでしょ?)

 

江口寿史の描くキャラクターは鳥山明のように広く一般受けする絵柄なので世界を視野に入れた作品にはもっと彼に仕事を依頼すべきだと思うんですよ。(もう本当に個人的な意見ですみません・・)

 

劇中の最後に未麻(主人公)が言った「私は本物だよ!」というセリフが意味深過ぎるため(良い意味でね!)見る人によってとらえ方が大きく変わりそうなところではあります。

 

たぶん幾重にも存在する「私」全てに対して「今ここに居る私が本物!」という意味だと思います。

 

「看護婦の言っていた未麻に対して」「ルミちゃんが抱いている幻想の未麻に対して」「アイドル時代だった過去の自分に対して」「ファンが求めているアイドル時代の未麻に対して」「両親がこうあって欲しいと望む歌手としての未麻に対して」「アイドル時代の未麻しか受け入れられない警備アルバイトしてたキモいお兄さんが抱く幻想の未麻に対して」・・

 

更には劇中で未麻の精神が錯乱状態になりつつある時に言っていた「私だれ?」も自ら現実の未麻は偽物なんだと自分に言い聞かせていたため、その答えであるとも言えるでしょう。

 

まぁこれは私個人の「答え」であり見る人それぞれの違う「答え」があって良いものだと思います。なので自分なりの「答え」が見つかるまで何度も繰り返して見て欲しい作品ですね♪

 

音声は「TrueHD5.1ch」で収録されているので個人的には「7.1ch」対応のワイヤレスヘッドセットでの視聴がお薦めになります。

 

「2600kbps」前後の厚い情報量で聞こえるため、静寂の中で突然後方から大きな環境音が鳴り響くような演出は「ホームシアター」を構築するか「ヘッドセット」を使ってのサラウンド再生で楽しんで下さい。

 

映画1本視聴するくらいの時間ならLogicoolの「G PRO X」がなかな良い感じでしょうか。(お薦め!)

 

私はこの作品「PERFECT BLUE」で大きな成功を収めた今敏監督の次回作品となる「千年女優」や「パプニカ」(遺作になるのかな?)も視聴しましたが、どちたも大変すばらしいと感じました。

 

今敏監督にはもっともっと多くの作品を世に送り出して欲しかったのですが今では叶わぬ願いです。しかし「PERFECT BLUE」という唯一無二の傑作を作ってくれたことには感謝しかありません。

 

この作品に関わった全ての人に「ありがとうございます」そして「おつかれさまでした」この言葉を贈りたいと思います。(2022年1月・・とあるブログの主より・・)

 

2022年1月2日 | カテゴリー : 日記 | 投稿者 : pasuta