動画鑑賞 BLOOD THE LAST VAMPIRE

さて・・ようやくこの作品を紹介する時が来ました。

 

私が過去に見た全ての作品の中で1番視聴回数の多いタイトル、それが2000年公開の「BLOOD THE LAST VAMPIRE」です!(特に冒頭の刀で切りつけるシーンを何百回も・・)

 

この映画はProduction.I.Gの押井守が1996年に若手育成のために設立した「押井塾」から発生したタイトルで「映画」だけでなく「ゲーム」それに「小説」の制作も同時に進行していました。

 

後に「LAST BLOOD」として実写化していますが、個人的には駄作と言って良いLvかと・・

 

(DVD買ったんだけどね・・)

 

監督は「サイボーグじいちゃんG」でお馴染みの北久保弘之が手掛けています。

 

(ってか知ってる人はあまりいない?)(「老人Z」の方が有名かな・・)

 

思うに北久保監督って頭のネジが4-5本飛んでますよね?(唐突で申し訳ないが私の本音です・・)「BLOOD THE LAST VAMPIRE」のキャラクターデザインにpainter使い(癖の強いCG制作ツールでこれを主軸に仕事してるクリエイターは少ない・・)(鳥山明も寺田勝也にCGを習いに行ったがpainterは無理だったと後日言っている・・)で有名な寺田克也を起用、しかも普通はやらないであろうキャラの輪郭を寺田の絵に合わせてササクレさせたのは有名な話・・

 

輪郭をササクレさせたのは寺田勝也の絵を忠実に反映させたのはもちろん、ヒロインの非人間性、獣のようなイメージを強調させる役割もある。

 

これにより製作スタッフの苦労は計り知れないものになっているはずなのですが、意外にも寺田勝也の絵を動かしたいという気持ちを多くのスタッフが共有していたようです。

 

寺田克也にしてみれば嬉しい事この上ない話ですね。

 

寺田克也の絵に惚れ込む気持ちは私にもちょっと理解できます。このDVDのパッケージを描いているのがそうなんですが超雰囲気出てますよね?(ってかこのパッケージ最高じゃない?)(家宝に出来る!)

 

誤解を招かない様にもう一度言いますが上にある写真は「DVD」のパッケージであり「Blu-ray」のパッケージではありません。(間違わないでね!)(この記事の一番上にある写真が「Blu-ray」になります)

 

さて、この映画の凄いところですが・・っていうよりもProduction.I.Gは予算以上の効果をCGで挙げてきます。CGをCGとして使わないというかアナログとの融合が上手なのと、動きのあるシーンでは予算の少ない3Dを使っているんですが、後から物凄く加工していて迫力が増します。

 

そもそもの動きが速いシーンだと3Dの単調なラインもそんなに目立たないしね。

 

一般的にイメージするCGというとキャラクターの3D化を連想する人が多いでしょう。この作品でもダンスのシーンで使われていますが動きが遅いので粗が目立ってましたw

 

この辺りの群衆3Dはディズニーが有名ですが2001年に公開された大友克洋脚本りんたろう監督のメトロポリスも優秀だったと思います。

 

「BLOOD THE LAST VAMPIRE」は全編通して暗いシーンが多いです。これを普通に作っていたらまともに評価される作品には仕上がりません。

 

北久保監督はCGを積極的に使う事で暗部の情報量を維持し、見る者の心を奪うような美しい光源処理をいたるところに挿入してきました。

 

押井守も言っています。暗いシーンが多いと黒一色で潰れちゃって情報量の欠落が生じる、と・・

 

逆転の発想なんでしょうか?得意分野とは言え、あえてその部分で勝負してくるProduction.I.Gの姿勢に頭が下がります。

 

「BLOOD THE LAST VAMPIRE」をフルデジタル作品にする事で、暗部の微妙な階調の中にあっても薄っすら認識できる程度のグロテスクな作画を、狙った通りに残せるんだから開いた口が塞がりませんw

 

暗い場面で僅かに差し込む光の表現なんかも素晴らしい出来だと思います。コンピューターの限界にチャレンジしたような(メモリや解像度など)(限界を超えると処理落ちするので何かを犠牲にしてスムーズに動くところまで落とさないといけない)幾重にもレイヤーを積み重ねた結果、完成した努力と根性の結晶なのでしょう。

 

具体的に言うと「AfterEffects」でこの作業をするのですが、新海誠を含め後続の映像作家に一つの大きな方向性を残した作品ではないかと思います。(新海誠もこれと同じ手法でアニメーションを作ってますね)(彼の場合は現実にない明るめの色彩で見る者を陶酔させるような美しい光源処理が得意です!)

 

後は劇中のキャラクターが日本語ではなく英語で喋っていたのも新鮮に感じました。

 

最初から世界規模での集客を狙っていたという話なので英語にするのはある意味当然かと。その成果なのか映画監督のクエンティン・タランティーノもこの映画が大好きで自身の作品「キル・ビル」ではアニメパートをProduction.I.Gに依頼しているほど!)

 

そして小夜の声ですが、ハリウッドで活躍中の(1999年「ヒマラヤ杉に降る雪」で脚光を浴びる)工藤夕貴に声をかけています。恐らくですがアメリカでの彼女の知名度に期待してのキャスティングと思われる。

 

ところが工藤夕貴演じる小夜がイメージドンピシャの素晴らしい演技を披露してくれます。俳優さんという職業の人は声だけの演技だと概ね上手じゃないんですよ・・

 

(なのに工藤夕貴の演技力ときたら・・これに驚いた日本のアニメファンは相当多かったはず・・)

 

(いやマジで本当に凄い演技力でした・・)

 

小夜というキャラクターは寺田勝也の絵に始まり工藤夕貴が声を演じ命を吹き込む、当時の私はガチでハマりました。しかも暗いシーンの中にある光源処理の素晴らしい出来と来たら・・北久保監督の人を選ぶ目には感服ですね。(まぁ上にも書いてますが工藤夕貴に関しては彼女がたまたま凄い演技をしてくれただけだと思いますが・・)

 

こんな感じで取り入れられる新しいものを全て取り入れて作られたチャレンジ精神あふれる「BLOOD THE LAST VAMPIRE」ですが劇場用としては短い96分の作品です。

 

下に「Blu-ray」と「DVD」の広告を載せているのでまだ見たことのない人は一度見て欲しいと思います。しかし今となってはアニメーションの技術も当時より格段に進歩しているため、今から初めて見てもそこまでの感動はないかも知れません。22年前にこの映像が完成したのだと考えて見てもらえるとそこそこ楽しめるでしょう。

 

2022年1月9日 | カテゴリー : 日記 | 投稿者 : pasuta